アルミの溶解に用いる炉の種類は大きく別けて2つあります。
1つはルツボ(坩堝)炉でルツボという鍋のようなものを使い、かまどのようにルツボを熱して その中に固体アルミ(アルミインゴット)をいれてルツボの中でアルミを溶かすもの。
もう1つは反射炉といってルツボは使わずに金属で製缶された容器の内側に耐火煉瓦などの耐火材を組み上げて 直接その中に アルミを溶かしておくものとがあります。
ルツボ炉は使うアルミの種類によってそのルツボを変更すればアルミ材料をかえられるので、材料変えの頻繁なところはルツボ炉が便利。
反射炉は一度使用してしまうと中のアルミを完全に除去することは難しいので、頻繁な材料変えには不向きだが、アルミを溶かすところと保持するところとを別々の部屋にしているものがほとんどのため、アルミの温度管理がやりやすいという利点がある。
ルツボ炉は坩堝中でアルミを溶かしている。連続操業時間が短い場合は坩堝の残湯量の心配がないが、操業時間が長くなると新たにインゴットを溶かしていかないといけない、このときに溶湯温度が低下するため、鋳造品質が安定しない。
ルツボ(坩堝)の素材種類には鋳鉄製坩堝と黒鉛製坩堝(シリコンカーバイド製坩堝)がある。鋳鉄製は衝撃などで割れる心配がなく、丈夫だが、そのままだとアルミ溶湯に侵食されてすぐに穴があいてしまうため、コーティング剤でコーティングする必要がある。
黒鉛坩堝はアルミ溶湯に侵食されにくく、鋳鉄のようにコーティングの必要はないが、衝撃に弱く割れやすいので取り扱いに注意が必要です。
左のような反射炉は連続溶解保持炉と呼ばれ、通常インゴットやリサイクル材を溶解する溶解室と、溶けた溶湯を同じ温度に保持しておく保持室を設けていて、溶湯温度のバラつきを抑え、同じ温度の溶湯を常時汲みだせるようになっている。
左の炉はターンテーブルに坩堝を2台ないし3台載せて交互に使用する設備。一方を使っている間にもう一方の炉で新たに溶解して、アルミ溶湯を清浄化したあと適正温度にしておくことができる。溶湯の品質に厳格な管理が必要な場合に有効である。
左の炉は浸漬ヒーター式の保持炉です。通常はバーナーで溶湯を保温しますが、このようにヒーターを炉の中に横から出して中から保温するものがあります。熱量の有効利用ができ、溶湯品質の劣化を少なくできます。
ダイカストで鋳造する合金には亜鉛合金、マグネシウム合金、真鍮など銅合金、アルミニウム合金があります。
アルミニウム合金のダイカストは軽くて耐食性にすぐれ、経年劣化が少ないことからダイカスト合金として最も多く用いられ、多くの産業で使用されています。アルミニウムは全ダイカスト合金の約95%を占めています。
以下はダイカスト用アルミニウム合金の化学成分表です。
アルミニウム合金の種類は大きく分けるとAl-Si(シリコン)系とAl-Mg(マグネシウム)系とに分かれます。Al-Si系はさらにAl-Si系(ADC1)、Al-Si-Mg系(ADC3)、Al-Si-Cu系(ADC10,12)、Al-Si-Cu-Mg系(ADC14)があり、Al-Mg系にはAl-Mg系(ADC5)及びAl-Mg-Mn系(ADC6)があります。
ダイカスト技能者ハンドブックより